10年以上疎遠になっていた兄弟間の相続。株式や未受領配当もあったケース

相続の解決事例

事案

いまから10年以上前に死亡した親の相続で、相続人が長男、二男の二人でした。二人は、母の死亡のあたりから疎遠になりその後、10年以上連絡を取っていなかったが、あることきっかけで再会し、金融資産の相続手続きをしたいと相談がありました。

金融資産の構成としては、預金と株式、株式の未受領配当金でした。また、株式については、制度変化の過渡期でしたので、現在新規でご加入いただく方のように比例配分方式というものになっておらず、証券会社の他に、複数の信託銀行に照会と相続手続きをする必要がありました(従来方式の配当受領方法)。

ちなみに、比例配分方式とは、配当金が証券会社の預り金等に入る仕組みになっているもので、証券会社の相続手続きをすれば株式や配当の相続も同時に完結します。

これに対し、従来方式は、配当金がゆうちょ銀行で換金できる払出証書や銀行振り込みを随時信託銀行が行う方式をいいます。従来方式の場合、株式の相続は証券会社で相続手続きをし、未受領配当金については、銘柄ごとに管理している信託銀行に相続手続きを行います

相続コラム(株式の比例配分方式について)

相続の際、株式数比例配分方式の配当の扱いはどのように行われるか

解決までの道筋

遺産分割の方針

長男と二男の方針は半分ずつ分けるという方針自体は固まっていましたので、あとは、どのような形で半分とするかについて行政書士から金融機関の手続きの仕組みを説明した上で、話し合いをしてもらいました。また、銀行の段階で半分に以前は分け振り込むことができる銀行が多かったですが、近年は銀行の合理化が進み、代表相続人に一人に振り込むという方式に変わりつつあります(例えば、200万円を長男、二男に100万円ずつ銀行から振り込まれる仕組みがありましたが、近年では、代表相続人に銀行から200万円が支払われ、長男が代表相続人となると長男が200万円いったん受領しその後、二男に100万円を送金するという流れとなります)。

具体的銀行名を挙げると、北海道内の銀行ではゆうちょ銀行、北海道銀行、北洋銀行、北陸銀行などです。他の銀行も基本的には、代表者一人に振り込むということが前提の手続き用紙になっているため、本事案でも代表相続人をどちらにするか決めていただき手続きを行うことにしました

株式の相続

次に、株式の相続ですが、2点ほど問題がありました。

1点目が、10年以上相続手続きを行っていないため、未受領配当金が多くあったということです

そして、その未受領配当金の中には時効を迎えているもの(規定により期間経過で消滅)があったり、これから配当金が株式の相続手続き完了に発生するというものもありました。また、これから発生する権利確定日が未到来の配当金は現時点では、予定金額となっており、実際には増減する可能性もあります。そのため、株式のある相続ではきっちり半分にするというのが非常に困難なものとなっております。

特に、疎遠な関係でなく柔軟に話し合いができる相続人同士であるとよいのですが、話し合いがうまくいかない場合、数百円、数千円でもトラブルのもととなります。

そのため、未受領配当金の仕組みを時間をかけて各相続人に説明し、必ず想定している金額とずれが生じるということを理解してもらい、相続手続き開始時点では正確な数字が出ないことを理解した上で手続きに応じていただくこととしました

2点目の問題が、株式の取得日が20年以上前のため、証券会社の方で取得日の簿価(ぼか)が付いていない銘柄があったことです。取得日の簿価がついていなくても相続手続きは問題なくできるのですが、いざ相続した株式を売却したときに売却益が出ているのか、売却損が出ているのかが不明です。また、株式については、1円でも売却益が出ていたら確定申告をしなければならないため、取得日の簿価が付いていないままでは、相続した後の売却した翌年の確定申告の際に苦労します。証券会社で簿価が付いていると売却時に売却益に対しかかる税金について、源泉徴収をしてくれるため特に何もしなくてよくなるのですが、簿価が付いていないと源泉徴収されないため、税理士に依頼し、確定申告をすることが必要となるため、税理士報酬が余分に発生します。

そこで、たまき行政書士事務所では、取得日の簿価を証明する資料を取得し(正確には、相続人様に所定の窓口に電話してもらい証明書を送付いただきました。)、相続手続き書類と一緒に取得日の簿価を証明する証明書を添付して送りました。そうすることで証券会社の方では、もともと取得日の簿価が付いていない銘柄であっても、簿価を付けた状態で相続人に株式を引き継がせることができます(ケースバイケースなので必ずできるというものではありません)

なお、取得日はいつかを証明する資料も必要であるため、異動証明書というものをさらに添付して証券会社に送りました。異動証明書とは、株の銘柄ごとに取得日から増減した理由現在の株数までわかる資料をいいます。この異動証明書は、銘柄を管理する株主名簿管理人(通常は、大手信託銀行3社のいずれか)が発行しております。

まとめ

行政書士 田巻 裕康

たまき行政書士事務所では、仲があまりよくなく疎遠であっても、当事者同士が解決したいという思いがあり、最低限の話し合いをして合意に至ってくれそうな場合にはお受けしております。ただし、弁護士法の関係でどちらかの代理人になるということは行政書士ではできないため、あくまで中立の第三者として行っていきます。

今回の案件でも当事者同士が長年手続していなかった親の相続手続きについて積極的に解決したいというお気持ちがありましたので、お受けしてできる限り半分に近づく形でまとめることができました。

このページの著者

たまき行政書士事務所
代表 行政書士 田巻 裕康

大学卒業後、サービス業の仕事を長年経験。その後、29歳で初めて本格的に法律を学びはじめる。行政書士に合格し、東京にある、相続遺言専門の行政書士事務所で勤務。もっと、ゆっくりと時間をかけてお客様に寄り添いたい気持ちが強くなり、第二の故郷である札幌にて独立し、たまき行政書士事務所を開業。

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行政書士・宅地建物取引士

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