相続土地国庫帰属制度のポイント
相続・遺言コラム不動産に関係する専門家の間でも話題
本日の相続コラムは、まだ施行(法律の実施)がされていないものの、専門家の間でも話題となっている相続土地国庫帰属の制度に関する法律について、少し専門的でマニアックな分野ですが、実務家の観点からポイントとなりそうなことを記事にしたいと思います。
なぜ、専門家の間で相続土地国家帰属制度が話題となるのかというと、実務では、国庫に帰属させることができる不動産というのはかなり限られるのでないかと予想されているからです。
以前の相続コラムで、相続土地国庫帰属法自体についての詳しい解説はしておりますので、制度を詳しく知りたい方は参考記事や法務省民事局の解説をご覧ください。
国庫帰属させる前提となる相続登記
国庫に相続土地を帰属させる上で前提となるのが、現在生きている方(相続の場合、相続登記によって取得した相続人)に名義を移す必要があることです。
しかし、相続登記をいつまでもなされない理由としては、単に費用をかけたくないという理由以外のことである方が実際には多いです。
例えば、
- 相続人同士が疎遠な関係になっていて話し合うことすらできない
- いわゆる兄弟姉妹相続事案なので、相続人が多数である
- 不動産及び預貯金など相続財産全体の分け方が決まっていないので不動産も相続登記できない
というのが代表例として考えられます。
そのため、相続土地を国庫帰属させるための前提で、複雑な相続人の関係性でも相続登記をまずしなければならないというのが困難なことの一つです。
参考記事
国庫帰属させるためには多額の費用が必要
相続土地国庫帰属制度は、国に有料で引き取ってもらう制度であるため、相続等で取得した相続人の出費と手間がかかります。
出費する金銭の名目は、土地管理費相当額の負担金と呼ばれています。
およその金額ですが、法務省民事局の発表した資料では、原野など粗放的な管理で足りるものは20万円が目安とされております。
これに対し、市街地の宅地(200㎡を想定)は、管理の手間がかかる可能性があるため、80万円が目安とされています。
あくまで上記の金額は目安であって、実際には土地の性質に応じた標準的な管理費用を考慮して算出した10年分の土地管理費相当を個別で計算していきます。
ただし、固定資産税の一切かかっていない原野などの土地(免税点以下の土地)については、管理費0円かというとそうではなく同じように20万円程度かかります。
相続人としては、いらない土地なので国に引き取ってもらいたいと考えるのですが、どのような土地でも国に引き取ってもらえるわけではありません。
引き取ってもらう土地の要件が厳格
まず、申請しても法務大臣から却下される土地の要件【第一のハードル】としては、
- ① 建物ありの土地
- ② 担保等権利設定がされている土地
- ③ 通路や他人による使用が予定されている土地
- ④ 特定有害物質により汚染されている土地
- ⑤ 境界が明確でない土地、所有権の存否や範囲について争いがある土地
これら①から⑤の土地である場合、相続土地国庫帰属の対象になりません。
特に、建物ありの場合、境界が明確でない場合という要件があるため、この第一のハードルで感覚的には7割程度の相続土地は国庫帰属制度の対象の土地に該当しなくなります。
相続専門のたまき行政書士事務所は、北海道に事務所があり北海道の相続案件がほとんどですが、北海道の土地には、境界が明確でない土地が多数あり、特に原野の場合、境界標(境界に埋め込まれる石など)が埋め込まれていない場合も多いです。
境界を確定するには、土地家屋調査士の方に現地調査、境界標の打ち込みをしていただく必要があり、調査や施工におよそ40万円はかかるため、境界が明確でない土地を相続土地国庫帰属制度から外すことは国の立場からするといたしかたないですが、大変厳しい取り扱いといえます。
次に、申請しても法務大臣が不承認としなければいけない要件【第二のハードル】としては、
- ⅰ. 崖地
- ⅱ. 建物とまではいかなくとも工作物、車両、樹木等有体物がその土地上にある場合
- ⅲ. 除去しなければ通常の管理、処分ができなくなる有体物が地下に存する土地(おそらく建築資材等を想定)
- ⅳ. 該当の土地に隣接する土地所有者と争訟によらなければ管理処分ができない土地(おそらく越境している等を想定)
- ⅴ. ⅰ~ⅳの他通常の管理処分にあたり過分の費用や労力を要する土地として政令で定めるもの
この5点が挙げられております。
特に、ⅱの樹木がある場合が、不承認処分の要件とされているのは、とても高いハードルです。
樹木が生い茂っている土地の場合、業者を入れるなどして綺麗に伐採しなければなりませんので費用が先行してかかります。
このように現時点で、法務省民事局から案内されている内容を見る限り、あくまで私見ですが、実務では、この相続土地国庫帰属法で引き取ってもらえる土地はほぼないといえます。
もし、この二つのハードルをクリアーできるような土地であれば、市場で取引されます(普通に仲介業者を介して売却できる)ので、お客様が思い浮かぶ国庫帰属させたい土地というのは、国が想定している引き取る土地とは、かなり乖離していると予想されます。
現状での結論
お客様から原野は国庫帰属制度で国に引き取ってもらうことができないかとご相談を個別にお受けすることがありますが、現段階では、引き取る対象とはならないであろうと回答しております。
ただし、親の方などが原野商法などで取得してしまった土地を何とか手放すというのは、将来、子や孫の世代のことまで考えると緊急の課題といえます。
たまき行政書士事務所では、原野商法で取得してしまった土地についてのお問い合わせを多くいただきますが、今回のコラムもご参考にしていただければ幸いです。
どうしても原野を手放したいという場合には、売却できるケースもありますので、一度、たまき行政書士事務所にご相談ください。
国庫帰属制度でかかる費用や時間よりは費用を抑えながら早く解決できることが期待できます。
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