【遺言を作成した方が良い方】第16話
養子縁組をしている方〔養子になった方向け〕
相続・遺言コラム
養子縁組とは、かなりかみ砕いて説明すると年上の方と年下の方が法律上の親子となることをいいます。養子縁組の時点から子供が生まれたようなイメージと考えるとわかりやすいでしょう。
養子縁組には、大きく分けて普通養子縁組と特別養子縁組がありますが、相続で問題となるのはほとんどが普通養子縁組ですので、今回のコラムでは、普通養子縁組をした養子を想定して解説します。 前回のコラムは、養親になった方向けの記事を書きましたが、今回は養子になった方向けの内容となっております。
養子になる2つの典型例
養子となるきっかけ(典型例)は主に2つ考えられます。
- 1. 連れ子として養親と養子縁組
- 2. 事業承継目的の養子縁組
1.連れ子として養親と養子縁組
1つ目は、妻の連れ子(妻と前夫との間の子)と妻の再婚相手の男性が結婚と同時に養子縁組をするケースです(連れ子として養親と養子縁組するケース)。
妻からすると2回目以降の夫となる方には、連れ子(特に未成年の場合)との養子縁組を求めます。なぜなら、養子縁組をしない場合、法律上の父とはなれず、妻の連れ子と夫(妻から見ると後夫)が本当の意味での家族とはなりにくいからです。
そのため、再婚相手の夫は、対外的に妻の連れ子の父親と名乗るためにも、家庭内でも血縁の父と同様となるためにもほとんどのケースで養子縁組をします。
ただし、連れ子が成人となっている場合には、特に扶養してもらう必要性がないため、連れ子側の本人の意思を尊重して、養子縁組をしないケースも多いです。
2. 事業承継目的の養子縁組
2つ目の典型例は、妻の父が事業を経営していてその後継ぎとして、妻の夫が妻の父の養子となるケースです(事業承継目的の養子縁組)。
これは、妻の父が死亡した場合に、養子となった妻の夫が、民法上、法定相続人となることを目的としております。
法定相続人となると、遺贈あるいは贈与ではなく相続という形で自社株を直接相続できることや、相続税の軽減にもつながるため技巧的に養子縁組を行うものです。
養子となった方がすべきこと=遺言(特に公正証書遺言)を作成すること
養子縁組をすると、その時点ではそれほど問題とならなくても、将来生じる養子の相続(死亡発生)の際に、法定相続人に大変な思いをさせることがあります。
多くの場合、前回のコラム(【遺言を作成した方が良い方】第15話 養子縁組をしている方〔養親になった方向け〕)で解説した通り、養親の方が遺言を作成した方が良いのですが、今回のコラムでは、養子の方が遺言を書いた方が良いケースを具体的に解説します。
養子の方が遺言を書いた方が良いケース
親が生きていて自身に子供がいない場合⇒遺言の作成が必要
先程、養子縁組をする典型例を2つ示しましたが、いずれの場合も共通して、養子に自身の子供がいない場合は遺言の作成を検討した方がよいでしょう。
理由としては、養子の方に自身の子供がいない場合に、親が生きている状態で養子の方が死亡すると、法定相続人は親と配偶者になるからです。養子の方に配偶者がいなければ、親のみが法定相続人となります。
親というのは、血縁の親(生みの親)と養親の2種類の親のことをいいます。
一見、血縁の親は養子縁組をした時点で法定相続人から外れそうではありますが、普通養子縁組の場合、血縁の親も養親と同様に法定相続人となります。
そのため、養子(自身の子供なし)の方が死亡すると、血縁の親と養親と(養子の方に配偶者がいれば)配偶者が法定相続人となります。
血縁の親(図でいえば血縁の父)と養親(図でいえば養父)とは、連絡を取り合うことがない場合がほとんどです。
そのため、養子になった方の遺産分割協議をするには、この連絡を取り合っていない親同士、血縁の母、養子になった方の配偶者の4人が遺産分割協議をする形となります。
このようなことを避けるため、養子になった方に自身の子がいない場合、遺言(特に公正証書遺言)の作成をした方がよいでしょう。
親が全員死亡していて自身に子供がいない場合⇒遺言の作成がさらに必要
かなり盲点といえるのですが、血縁の親と養親が全員死亡している場合には、(養子の方に配偶者がいれば)配偶者と兄弟姉妹(兄弟姉妹が死亡していれば、代襲相続人として甥や姪)が法定相続人となります。
この兄弟姉妹(又は甥や姪)の範囲は、「2. 事業承継目的の養子縁組」の図のように血縁の親側の兄弟姉妹と養親側の兄弟姉妹の両方となります。
この図を見るだけでお分かりかと思いますが、遺言を作成していない場合、配偶者の方(図でいうとX)は、養子の方の血縁の親側の兄弟姉妹(図でいうA)と養親側の兄弟姉妹(図でいうとCとD)と遺産分割協議をする必要があり、大変な思いをすることとなります。
遺言(特に公正証書遺言)を作成しておけば(例えば、配偶者に全部相続させる旨の遺言)、遺産分割協議を経る必要がなくなり、養子になった方(配偶者から見れば夫)は遺産を自身の配偶者(図でいうとX)に全部相続させることができます。
遺言を作成するなら公正証書遺言
養子になった方が遺言を作成する際には、手続きの確実性と遺言の効力の強化のため公正証書遺言をお勧めします。
細かな違いについては、参考記事で解説しておりますのでご参照いただきたいのですが、公正証書遺言は、
- 作成要件が厳しい(証人二人、利害関係者は作成時に関与できない、公証人が必ず関与)ため、無効主張がされにくい
- 家庭裁判所への検認が不要
- 少なくとも専門家が1人以上(公証人及び行政書士、弁護士など)関与するため内容の不備が生じにくい
という3点が長所として挙げられます。
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