重度の認知症がある相続人がいる場合の不動産に関する遺産分割協議について【登記義務化を踏まえた検討】
相続・遺言コラム重度の認知症がある場合の3つの対応
重度の認知症がある場合、遺産分割協議自体が、協議する能力がない(意思能力がない)ため、
という3つの方法のいずれかで対処する必要があります。
重度の認知症がある方の不動産の相続手続き
1つ目の方法:法定後見人を選任する
重度の認知症があり、飲食はでき生存はしているけれども、
- 自分の生年月日を言えない
- 被相続人が死亡した事実もよくわかっていない
- 日常会話が困難
- 自分の子供が来たが子供の名前が出てこない
などということがよくあります。
特に、令和2年から継続的に蔓延している新型コロナウイルスの影響で外出がなかなかできず、家族との面会が月1回とかに制限されてしまうため、刺激がなくなり、認知症が急激に進んでしまうということが近年よく起こっております。
この場合、司法書士の本人確認がクリアーできないため、現実的に遺産分割協議による相続登記をすることはできません。
このように認知症が進んでしまっている場合には、正式なやり方としては、家庭裁判所へ成年後見人選任申立てをし、弁護士、司法書士などを法定後見人に選任してもらう必要があります。
親族などが法定後見人になることも可能ですが、その場合には、弁護士などが後見監督人となることが多いでしょう。
いずれにしても、重度の認知症のある相続人自体が遺産分割協議に参加することができない代わりに、成年後見人等が署名押印する必要があります。
1つ目の方法の欠点
成年後見人を選任することは、重度の認知症があるときの正式なやり方となりますが、遺産分割協議後も基本的には一生成年後見人が就くため、成年後見人や成年後見監督人への報酬が生涯発生します。
また、何かと預金の使い方に制限が課される(半強制的に信託銀行への信託預金へ移動など)ため、実際には、使い勝手が悪いことがあります。
2つ目の方法:法定相続分で相続登記をする
不動産については、預貯金と違い法定相続分に基づく相続手続き(相続登記)をすることができます。この方法であれば、相続人の一人の申出で、遺産分割協議を経ることなく、相続登記ができます。
この方法であると、とりあえず、登記義務化への対応はしたことになります(罰則が来ることがありません)。
2つ目の方法の欠点
ただし、とりあえず共有状態となりますので、あとで面倒なことになることがあります。
例えば、夫死亡、妻(重度の認知症)、長男夫婦が親と同居、長女が本州に嫁いでいるという状態のとき、相続人全員が長男への登記を希望していたとしても、法定相続分による相続登記であると、妻2分の1、長男4分の1、長女4分の1の持分権者となりますので、将来売却や大規模リフォームの際に困ることがあります。
そのため、法定相続分による相続登記は、重度の認知症の方がいる場合対処法として適法な処理方法となりますが、とりあえず、登記したにすぎず、あまり現実的な解決方法とは言えない場合が多いです。
3つ目の方法:よく検討した結果何もしない(しばらく相続登記しない)
現実的に行われている実務の方法として、重度の認知症がある方がいる場合、ご年齢、健康状態、今後の不動産の利用方法等を総合的に判断した上で、なにも手続きしない(相続登記しない)という方法があります。
では、いつ相続登記をするかというと、重度の認知症の相続人の方が死亡した時となります。
例えば、先ほど挙げた例で、夫死亡、妻A(重度の認知症)、長男B夫婦が親と同居、長女Cが本州に嫁いでいるという状態のとき、相続人全員が長男への登記を希望していたという状況で、重度の認知症のある妻Aが95歳のとき、何年か先に妻Aさんの相続が発生することが一般論としては予想されます。
そのため、よくよく検討した結果、1つ目の方法や2つ目の方法を採ることが適切ではない場合、何も登記しないという選択肢もあります。
法律家として、この方法をおすすめすることは適切ではないのかもしれませんが、現実的には、何も手続きしないということを提案することも有ります。
この時、相続人が最低限行うことは、固定資産税の納税義務者の申出を固定資産税を通知している自治体へ行うことです。
そうすれば、固定資産税を正式に払い続け問題なく不動産を利用することができます。
ただし、この方法を採る場合には、重度の認知症でない相続人の方全員でその結論をとることを合意した方がよいです。また、上記の例で、妻Aに前夫の子などがいた場合、相続人が増えますので、その場合には、3つ目の方法を採用することは避けた方がよいです。
3つ目の方法の欠点
3つ目の方法である、何も手続きしないという方法の欠点は、これから始まる登記義務化の法律の関係で、場合によっては、相続登記が何年も先になることにより罰則の対象となることでしょう。
ただし、相続発生から3年を経過したらすべての方に罰則が即時に与えられるわけではないですので、重度の認知症の相続人が数年で死亡する可能性が一般論として高い場合には、現実的な解決方法として、有効といえるでしょう。
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