公正証書遺言の撤回をするには
相続・遺言コラム遺言の撤回は遺言で行うことが可能
よくよく考えて遺言を作成したもののその後、
- 遺言によって財産を渡す(相続させる又は遺贈する)としていた方との関係性が崩れる
- 財産状況が変化する
- 気持ちが遺言作成時から変化した
- 別の人に渡したい
このようなとき、遺言の撤回は可能です。
一度作ったらもう変更できないと思うかもしれませんが、撤回も本人が望めば、本人の意思のみで自由にできます。
民法という法律の条文にも、遺言は撤回できると記載されております。
(遺言の撤回)
民法
第1022条 遺言者は、いつでも、遺言の方式に従って、その遺言の全部又は一部を撤回することができる。
撤回方法のいろいろ
遺言全体をなかったものにしたい場合、シンプルに遺言を撤回し、遺言がなかった状態に戻すことが可能です。
【撤回方法1】遺言自体を撤回(なかったことにする)
公正証書遺言で遺言を作成した場合に、遺言の撤回をするには、公正証書遺言を作成したときと同様に公証役場で証人2人の立ち合いのもとに令和7年7月1日に作成した公正証書遺言を撤回するという内容の公正証書遺言の作成を行います。
初めて書いた遺言が、公正証書遺言で、公正証書遺言自体を撤回するのであれば、遺言自体なにもない状態となります。
ただし、公正証書遺言を作成する方は、何かしらの作成の必要性が強くあり作成した方がほとんどですので、単に遺言自体を撤回するというケースはほとんどない状況と思います。
【撤回方法2】異なる内容の公正証書遺言を作り直す
例えば、Aさんに財産のすべてを相続させると考えていたが、Bさんに財産のすべてを遺贈したいとなった場合には、公正証書遺言をもう一回作成し、Bさんに財産のすべてを包括的に遺贈するというものを作成します。
これでAさんに渡すとしていた遺言は撤回されたこととなります。(民法1023条第1項参照)
【撤回方法3】生前に遺言に記載の内容と異なる行為をする
例えば、Cさんに不動産を相続させるという公正証書遺言を作成していたけれども、遺言者(遺言を作成した方)がCさんに相続させようとしていた不動産を生前に売却した場合には、遺言と抵触するものとして、遺言の該当する部分(Cさんに不動産を相続させるという部分)については、撤回したものとみなされます。(民法1023条2項参照)
(前の遺言と後の遺言との抵触等)
民法
第1023条 第1項 前の遺言が後の遺言と抵触するときは、その抵触する部分については、後の遺言で前の遺言を撤回したものとみなす。
第2項 前項の規定は、遺言が遺言後の生前処分その他の法律行為と抵触する場合について準用する。
要注意
遺言を撤回したときには、撤回した遺言は物自体(遺言文面)を無くした方が良いです。
例えば、公正証書遺言を令和7年7月1日に作成し、令和7年12月12日に撤回した場合、令和7年7月1日に作成した公正証書遺言は物を回収されない限り、将来公正証書として手続き上使えてしまいます。法律上は、その撤回された公正証書遺言は無効ですが、事実上手続きで使えてしまいます。
そのため、撤回をする遺言を作成しただけでは油断できず、撤回した遺言は物自体を回収し処分した方がよいでしょう。その方がのちのトラブル防止となります。
遺言は一度作成したら書き換えなくて済むのが理想
公正証書遺言を作成する場合、たまき行政書士事務所(札幌市北区)では、一度作成したらもう書き換えなくてよいようにします。撤回することがないように、公正証書遺言作成のための相談の際に深く事情をお聞きしています。
一番多い書き換え原因としては、受遺者が死亡してしまうことです。この場合でも書き換えなくてよいように予備的受遺者を設定します。遺言執行者に指定した人も死亡することがありますので、遺言執行者も予備的遺言執行者を指定しておきます。
例えば、遺言者の財産をすべてAに相続させる。遺言執行者をAに指定する。という文言の他に、Aが遺言者より先に死亡した場合には、Bに相続させる。Aが遺言者より先に死亡または、病気等により遺言執行の業務を行えない場合には、Bを遺言執行者に指定する。という内容の予備的文言を入れます。
まとめ
今回は遺言の撤回について中心に解説しましたが、一番良いのは撤回をしないように作成段階で十分に検討することです。ただし、事情の変化により一度作成した遺言を撤回や変更しなければならない事態も生じることがあります。
その際、お困りでしたら相続・遺言専門のたまき行政書士事務所(札幌市北区)にお気軽にお問い合わせください。
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