公正証書遺言を作成した後、遺言者が死亡したときの手続きについて
相続・遺言コラム公正証書遺言がある場合の死亡後手続き【札幌市内を想定】
今回のコラムでは、普段から公正証書遺言作成サポートや遺言の執行手続きに携わる行政書士の観点で公正証書遺言を利用したときの流れと注意点をわかりやすく解説します。
ご家族が亡くなられた後に「公正証書遺言があることが初めて分かった」というケースは実はあまり多くないです。たまき行政書士事務所では、受遺者に知られずにこっそり遺言を作成したいというご要望は割合的には非常に少なく、受遺者の誰かに事前に知らせているケースが多いです。そのため、公正証書遺言の検索の仕方については、コラムの後半で軽く説明することとし、公正証書遺言を用いた遺言執行手続きを中心に解説します。
そもそも公正証書遺言とは
公正証書遺言とは、公証人の面前で遺言者(遺言を作成したい方)が口頭で陳述したものを公証人(公証役場に勤務する準公務員)が録取し作成する遺言のことをいいます。
実務では、行政書士や弁護士などの法律家が間に入り、行政書士等が遺言者のお気持ちを聞いた上で遺言の原案となる文書を作成し、必要な資料とともに公証役場に持ち込み、公証人と打ち合わせて準備を整え、公正証書遺言作成当日に最終確認程度に公証人が口頭で遺言者に内容を確認することも多いです。
公正証書遺言は、少なくとも1人以上(多くの場合2名)の法律の専門家が関わり、証人2人の面前で行い、利害関係者が遺言作成の現場に立ち入ることが出来ないため、銀行や不動産の手続きでの文書の信用性が高く、実務に詳しい方に相談すると、遺言を作成するなら基本的には公正証書遺言でとなるのが通常です。
参考記事
公正証書遺言を用いた遺言執行手続きについて(札幌市での実務を中心に解説します)
公正証書遺言は、公証役場で作成される最も信頼性の高い遺言(ゆいごん)です。
特に札幌市内の金融機関(北洋銀行・北海道銀行・ゆうちょ銀行・北海道信用金庫・北陸銀行など)では、公正証書遺言による相続手続きが迅速に進む傾向があります。法律上の建前は、遺言に優劣はありませんが、公正証書遺言は、厳格な要件をもとに作成される遺言の形態なので信用力が違います。よく実際の事件やテレビドラマで遺言の中身や遺言の真偽について争われるのは、ほぼ100%自筆証書遺言です。
当然、金融機関としても、不正解約などの犯罪に巻き込まれるのを防ぐため、自筆証書遺言の場合には、公正証書遺言より慎重に扱うということがあります。例えば、実際にあった銀行窓口でのケースでは、(お客様自身が自力で書いた)自筆証書遺言の場合、内容が不明確な点や不備が少しでもあると検認証書付の自筆証書遺言があったとしても、法定相続人全員の同意書を求められることがありました。
公正証書遺言では、内容の不備はほぼなく偽造リスクもほぼないといえるため、銀行での対応がスムーズです。また、不動産登記の際も公正証書遺言と自筆証書遺言では若干扱いが異なります。
具体的な遺言執行手続きの手順
まず、被相続人の戸籍を中心に戸籍を収集します。どのような遺言の内容になるかにより異なりますが、基本的には、遺言があろうとなかろうと、戸籍を収集する範囲は同じと考えるとよいでしょう。例えば、被相続人、妻、長男、長女であれば、被相続人の出生から死亡までの戸籍(妻は、最後の戸籍に一緒に載っているので妻自身の戸籍は取得不要)、長男、長女の現在の戸籍です。
実際の手続き書類では、被相続人の死亡記載の戸籍と受遺者の現在戸籍のみで可とされていることもありますが、遺言執行の際には、法定相続人全員に通知を行う必要があるため、基本的に法定相続人全員の戸籍を収集します。
次に、遺言執行者が財産調査をします。例えば、北洋銀行・北海道銀行・ゆうちょ銀行・北海道信用金庫・北陸銀行の通帳や定期証書が見つかった場合には、銀行窓口で残高証明書を発行してもらい、遺言者(故人、被相続人)の全支店口座を調べます。
不動産については、名寄帳と固定資産評価証明書を取得します。例えば、札幌市北区に不動産を保有している方が死亡したときには、札幌北部市税事務所(アスティ45の9階)の窓口に請求すると出してくれます。その後、登記簿謄本というものを最寄りの法務局で取得します。遺言執行の場合には、調査と手続きを分離させ一気にやらない方がよいでしょう。なぜなら、法定相続人に事前に通知を出す必要があるからです。
財産の調査が終わり、残高証明書や揃いましたら、遺言執行者は、法定相続人全員に財産の通知をします。法定相続人の中で一切財産を取得できない方も出ることがありますが、その方に遺留分侵害請求などの機会を与える上で通知は必要となります。法律上も通知と財産目録の交付が遺言執行者の責務として規定されております(民法1007条2項、1011条1項)。
(遺言執行者の任務の開始)
第千七条 第1項 遺言執行者が就職を承諾したときは、直ちにその任務を行わなければならない。
第2項 遺言執行者は、その任務を開始したときは、遅滞なく、遺言の内容を相続人に通知しなければならない。
(相続財産の目録の作成)
第千十一条 第1項 遺言執行者は、遅滞なく、相続財産の目録を作成して、相続人に交付しなければならない。
第2項(略) 民法
次に、公正証書遺言と相続手続きに必要な戸籍一式、遺言執行者の印鑑登録証明書、通帳等を持参して、銀行や法務局に行きます。
遺言執行者が一般の方であれば、調査や手続きを自分で行うのが困難であることもおおいため、そのときは、委任状にて行政書士や司法書士に手続きを遺言執行者の代理人として行わせることができます。
先の例でいえば、北洋銀行・北海道銀行・ゆうちょ銀行・北海道信用金庫・北陸銀行にて遺言執行者によって解約手続きをし、札幌北法務局にて、不動産の名義変更をします。
財産調査が終わった時点で、いわゆる相続税案件であることが分かった場合、手続と同時進行で相続税の申告の準備に入ります。相続税の申告は非常に難しいため、基本的には、相続税の申告に強い税理士に税申告を依頼することになると思います。
相続税の申告及び納税は、死亡から10か月以内のため、素早く税理士も手配する必要があります。税申告期限まで1か月を切っているという場合には、依頼を断られる可能性もありますので注意が必要です。
このような5つのステップで進みます。
参考記事
公正証書遺言があり遺言執行者は自分に指定されているが専門家に任せたいという場合
多くの場合、公正証書遺言を作成するとき行政書士や弁護士などが関与して作成していますので、そのとき担当した行政書士等に手続きを依頼するのが良いでしょう。
しかし、その時頼んでいた行政書士等に頼まず別の行政書士等に依頼することも可能です。例えば、たまき行政書士事務所では、
- 遺言作成の時に関与してくれた行政書士がいまは廃業しているため、代わりに手続きをしてほしい
- 遺言作成の時の弁護士が少し自分とは相性が合わなかったため、代わりにやってもらいたい
- 直接公証役場で遺言者が作成していたので関与している行政書士等がいない
というときなどに、遺言執行者の代理として遺言執行手続きを行うことがあります。
たまき行政書士事務所(札幌市北区)では、当事務所で作成に関与した方のみならず、当事務所以外の関与で遺言を作成した方の公正証書遺言の執行を行っております。
公正証書遺言が見つからないときの検索の仕方
事案としては少ないですが、故人が公正証書遺言を作成していたといっていたけれど見つからないという場合、あるいは、念のため公正証書遺言があるかないかチェックしたいというときには、最寄りの公証役場で検索を掛けます。
遺言者の生前に親族等が検索を依頼しても一切回答されません。
ただし、検索の条件が限られておりまして、遺言者の生前には遺言者自身でしか確認できません。推定相続人が遺言を検索することはできません。仮に、電話や公正証書の窓口に行って「(生きている)父が遺言を作成しているか確認したい」と問い合わせをした場合には、公証人からこのような回答となります。「公証役場としては、(その方が)公正証書を作成したかしていないかも含め、一切回答はできません」といわれるでしょう。
遺言作成というものは、誰にも干渉されず、遺言者の単独で自分の財産の行方を決めることのできる権利の一種です。遺言を作成したかどうかを言ってしまえば、遺言者のプライバシー侵害といえ、遺言の作成を強制される被害を受けるかもしれません。そのため、どのような事情があっても遺言者の生前には、公証役場が回答をすることはありません。
遺言者の死後は一定の者は遺言検索が可能
遺言者が死亡した後は、法定相続人全員が概念としては、(遺産分割協議前までは)被相続人の財産を共有している状態となります。そのため、遺言者の死後は、公正証書遺言を検索する権利が生まれます。法定相続人にとって、自身の財産となる相続財産について、知る必要があるからです。
具体的に、遺言者の死後、公正証書検索をすることができる方は、
- 法定相続人
- 遺言執行者に指定された者
- 受遺者(遺言によって遺贈を受ける者)
に限られます。
検索場所と持っていく書類
札幌市内では、
- ① 札幌大通公証役場
- ② 札幌中公証役場
が公証役場として存在します。札幌大通公証役場の方が規模的には大きいですが、どちらでも構いません。ちなみに、たまき行政書士事務所では、札幌大通公証役場を利用しています。
ご自身が、遺言者の法定相続人の場合、
- 相続人であることがわかる範囲の戸籍一式
- 検索者の本人確認書類(運転免許証やマイナンバーカード)
を持参します。例えば、夫の遺言検索をかけるとき、妻であれば、遺言者の死亡記載の戸籍1枚を持っていけば、妻という時点で法定相続人であることが確定しますので検索してくれます。
遺言執行者に指定された者、受遺者については、持参物はケースバイケースですが、少なくとも、
- 遺言者の死亡記載の戸籍
- 遺言者と検索者本人の関係性がわかる戸籍
- 検索者の本人確認書類
は必要とされるでしょう。
検索後、公正証書遺言を作成していたことが判明した場合
例えば、札幌大通公証役場で検索(日本公証人連合会の遺言検索システム)を掛けて。札幌中公証役場に公正証書遺言の原本を保管されていた場合、札幌中公証役場に行き、公正証書謄本を発行してもらいます。そうすると、遺言の中身が確認できます。
公正証書遺言は基本的に正本を手続きで求められますが、正本はないといえば謄本でも手続きの対応はしてくれます。正本は、1通しか発行されないため、紛失してしまったら正本は二度と手に入りません。そのため、銀行など金融機関に正本でなければ手続きできませんと言われた場合には、あきらめず謄本で手続きに応じるようにお話しするとよいでしょう。
公正証書遺言の正本は再発行されませんし、ないもの(制度的に再発行不可のもの)はどうしようもありません。正本がないことを理由に手続きを断る方が問題となりますので、謄本でも最終的には応じてくれるでしょう。
たまき行政書士事務所では、公正証書の謄本しかないお客様の遺言執行手続きを代理していますが、いまのところ正本でなければ応じないといわれたことはありません。
公正証書遺言の大きなメリット・まとめ
- 家庭裁判所の検認が不要
- 相続人全員の印鑑が不要(遺言執行者がいる場合)
- 不動産の相続登記がスムーズ
- 預金の払戻し・名義変更が早い
- 相続トラブルを防ぎやすい
特に札幌市内の方の場合、「相続人が道外に住んでいる」「東京に行った相続人と疎遠な関係が長く遺産分割協議に不安がある」というケースが多いため、遺言書があるだけで負担が大幅に軽減されます。
最後に、遺言執行者の有無で手続きの進め方が大きく変わります
公正証書遺言には、ほとんどのケースで遺言執行者が指定されています。遺言執行者の記載がないまま提出すると公証人から遺言執行者の指定をした方がよいことをアドバイスされますので、当事務所の経験では、いままで公正証書遺言で遺言執行者の記載がないものは見たことがありません。
遺言執行者は、受遺者に指定されている相続人や行政書士、弁護士、司法書士などの専門家がなることもあります。
たまき行政書士事務所では、基本的に遺言執行者は受遺者に指定されている相続人になることをお勧めしております。その方が一番早く死亡の事実を知ることができるため、遺言を確実に執行できるからです。
遺言執行者の役割
遺言執行者には、財産を動かすための多くの権限があります。
- 預貯金の調査・解約・払い戻し
- 不動産の相続登記の申請(司法書士と連携)
- 株式・投資信託の名義変更
- 相続財産の分配
- 手続き完了後の報告
札幌市の銀行の多くは「遺言執行者の権限」を尊重し、相続人全員の印鑑を求めないため、手続きが非常にスムーズです。ただし、遺言執行者の記載が漏れていた場合には、相続人全員の印鑑登録証明書の提出を求められるか、あるいは、遺言執行者選任の申立てをするように言われます。
公正証書遺言があることで、家族の負担は大きく軽減されます
相続トラブルが起きる原因の多くは「分け方で揉めること」です。
公正証書遺言があることで、
- 分け方が明確
- 手続きが早く進む
- 印鑑を集めなくてよい
- トラブルを避けられる
というメリットがあり、家族の負担は大きく軽減されます。
札幌市内で公正証書遺言がある相続手続きをするなら
たまき行政書士事務所は、札幌市北区に事務所があり、相続遺言に専門特化した専門事務所として、次の業務をワンストップで対応しています。
- 戸籍収集
- 公証役場での遺言書謄本取得サポート
- 銀行・証券会社の相続手続き
- 不動産名義変更(司法書士連携)
- 相続財産の調査・財産目録作成
- 遺言執行者の実務代行
- 相続税が必要な場合の税理士紹介
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