令和7年12月15日開始の電子公正証書遺言について解説します

相続・遺言コラム

公証証書も電子で原本保管の時代へ

近年、役所の提出物などで押印の廃止が進んでいますが、公証役場についても遺言者や証人の押印が電子公正証書遺言になり令和7年12月15日より完全に廃止されました

このコラムの作成日までに電子公正証書遺言と電子委任契約および任意後見契約を実際に計6件分行いまして、実務の実態が分かりましたので共有させていただきます。

また、電子公正証書遺言は、対面型リモート型がありますが、リモート型は外出のできない方や離島の方など基本的にリモートにしなければならない理由がある方を想定しておりますので、今回はほとんどの方が利用する対面型の電子公正証書遺言について解説したいと思います

いままでと違うところ

いままでは、管轄の公証役場が紙で原本を保管するというやり方を基本とし、大規模災害などが起きて紙が紛失した場合に備え、日本公証人連合会のクラウド保存場所に遺言者の承諾を得て、電子でも保管しておりました。そして、原本の作成が終わると公正証書遺言の《正本》と公正証書遺言の《謄本》が紙で渡されておりました。

今回、令和7年12月15日から開始した電子公正証書遺言は、公正証書遺言の原本自体が電子的なもの(PDF文書)となり、希望の方に紙で正本相当の文面と謄本相当の文面を渡すという仕組みになりました。また、電子的にそのまま受領するという制度もできましたが、相続手続きの実務では紙で手続きをいたしますので、電子的なままで公正証書遺言を利用することはしばらくないと思われます。

作成までの手順はいままでと変わらない

電子公正証書遺言になってから、公証役場の公証人や職員の方々の業務は増えておりますが、遺言を作成する側の業務はそれほど変わりません変わるのは、当日の流れのみで準備の期間はいままでと同様です

いままでも公証役場には、遺言原案をワード文書で送り、戸籍や固定資産評価証明書など紙の資料はPDFにして送っておりました。この度、電子公正証書遺言になってもその作業は変わりません。

違いは、公正証書遺言作成当日の流れです。

図解で解説

従来の作成当日現場

 

いままでは、公証人が原本を紙で持参し、パソコンを持ち込むことはなく、遺言者や証人の前には紙の公正証書遺言が公証人の読み上げの確認のためにおかれておりました。(絵を参照ください。)

※ 中央にいる男性が公証人、左にいる男性が遺言者(今回遺言を作成する方)、右にいる2名が証人です。

電子化されたあとの作成当日現場

この絵は、電子公正証書遺言の作成現場をイラストにしたものです。

※ 中央にいる男性が公証人、左にいる男性が遺言者(今回遺言を作成する方)、右にいる2名が証人です。

公証人のノートパソコンの情報は、有線でタブレットにつながれ、電子的な文章を公証人、遺言者、証人で一緒に確認していきます。

ただし、タブレットは一つのため、実際には、紙で出力したものも遺言者と証人の目の前に置かれております。

読み上げが完了して内容に間違いがないこと誤字などないことの確認が終わりましたら、最後にタッチペンでタブレットに遺言者、証人、公証人の順に電子署名をします。また、従来必須だった遺言者、証人の押印も電子公正証書遺言になってから完全になくなりました。

ただし、公証人のみ電子的な押印をします。

その後、遺言者、証人の目の前で公証人が電子的に保管をします。遺言者、証人は、公証人がアップロードの作業を完了するまで見届けます。

手間がかえってかかる電子化を採用した理由

遺言執行実務では、いままで通り紙の公正証書遺言によって行い何ら問題なく不便な要素はなかったにも関わらず、電子化したのか疑問に思うかもしれません。

 

実は今回の電子化は、遺言書の作成を簡単にするための制度変更ではありません

むしろ、高齢者にとっては、非常に複雑化したといえます。それでも電子化に踏み切るのには、「安心して将来的に長期間遺言を残せる仕組み」を整えるためといえます。

採用理由① 高齢化が進み、公証役場に出向くことができず作成をあきらめていた方も多くいた

公正証書遺言を作成する方の多くは、70代・80代以上の方です。すごく健康な時に作成する方もいますが、ご病気が進んだ段階で作成する方も一定数います。

  • ① 足腰が弱くなり外出が難しい
  • ② 病院や介護施設に入所している。施設のルールで外出できない
  • ③ 体力がなく長時間の遺言作成手続きが負担になる

といった事情を抱えた方も増えています。

電子化によって、公証役場での手続きの進め方が柔軟になり、体力や移動の負担をできるだけ減らしながら、確実な遺言書を残せる環境が整えられました。これまでは、公証役場に行くことができない、ご病気をもつ方は、病院や高齢者施設で公証人や証人が出向き公正証書遺言を作成しておりました。これが、電子化を進めることで今後、遠隔でもできるようになります

採用理由② 紙の原本だけでは、将来に不安が残る時代になった

これまで公正証書遺言は、紙の原本を作成した公証役場内で物理的に保管する仕組みでした。

もちろん厳重に管理されていますが、

  • 災害が多い日本であること
  • 長期間の保存が前提であること
  • 検索や再発行に時間がかかる場合があること
  • 近年の国際情勢の悪化でいつ保管場所が破壊されるかもしれません

など、紙だけに頼ることの限界も見えてきています。

電子公正証書では、原本を電子データとして安全に管理することで、紛失や劣化のリスクを減らし、将来必要になったときに確実に確認できる仕組みが強化されています。

採用理由③ これからの時代に合った「確実な遺言書」の形へ

相続は、残された家族にとって大切な問題です。

だからこそ、

  • 内容が明確で
  • 争いになりにくく
  • いざという時に確実に使える

遺言書であることが何より重要です。

電子公正証書遺言は、公正証書遺言の安心感はそのままに、これからのデジタル社会に合わせて、より安全に・確実に遺言を残せる形へ進化した制度といえるでしょう。

まとめ

公正証書遺言の電子化は、作成を便利にするための変更ではなく、高齢化や災害リスクが高まる時代の中でも、「確実に意思を残せる遺言制度」を将来長期間にわたり守り続けるための制度改革といえますただ、電子化が進めば進むほどデジタルに慣れている人は便利になりますが、ご高齢者の方は電子化が進むことでますます、公正証書遺言が縁遠いものと感じるかもしれません

電子公正証書遺言は、行政書士、弁護士、司法書士などの専門家が間に入り公証役場と連携して作成することができますので、電子公正証書遺言の作成を考えている方は一度遺言の専門家にご相談してみるとよいでしょう

たまき行政書士事務所でも、電子公正証書遺言のご相談を行っております。まずは、遺言自体作成した方が良いケースなのかを聞きたいなどちょっとしたことで構いませんので一度ご相談いただけばと思います

このページの著者

たまき行政書士事務所
代表 行政書士 田巻 裕康

大学卒業後、サービス業の仕事を長年経験。その後、29歳で初めて本格的に法律を学びはじめる。行政書士に合格し、東京にある、相続遺言専門の行政書士事務所で勤務。もっと、ゆっくりと時間をかけてお客様に寄り添いたい気持ちが強くなり、第二の故郷である札幌にて独立し、たまき行政書士事務所を開業。

保有資格
行政書士・宅地建物取引士

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